悪性鉄分不足と良性鉄分不足の違い

悪性鉄分不足とは、ビタミンB12の欠乏によって起こります。ビタミンB12は、通常の食生活をしていればまず欠乏することはありません。
ピロリ菌などを原因とする萎縮性胃炎によって、胃粘膜が萎縮すると、ビタミンB12の吸収に不可欠な胃内因子が不足します。悪性鉄分不足は、この胃内因子の分泌不足で発生するのがほとんどです。

胃内因子が不足すると、ビタミンB12の欠乏が生じ、デオキシリボ核酸(DNA)の合成に障害が出ます。これにより、無効造血となって、鉄分不足症状が出ることになります。

なお、この鉄分不足とは、ビタミンB12の存在が発見されるまで、この鉄分不足の治療法がなく、死に至る病気であったことから、「悪性」という名が付けられています。あまり使用されませんが、この悪性鉄分不足以外の鉄分不足を良性鉄分不足と呼ぶ場合もあります。

悪性鉄分不足は、他の鉄分不足と同様の鉄分不足症状が出ます。めまい、息切れなどです。
その他に、DNAの合成障害が生じることから、神経症状が出る場合もあります。位置覚障害、知覚障害、認知症様症状などです。

上記のように、ビタミンB12の欠乏が原因であることから、治療は、ビタミンB12の摂取によって行います。主に、非経口投与(点滴など)によってビタミンB12を摂取します。ただし、ビタミンB12は、腸管からもわずかながら吸収することが可能であることから、大量経口投与(飲み薬による投与)を行う場合もあります。

ビタミンB12の投与により、悪性鉄分不足の、特に鉄分不足症状は、劇的に改善します。ただし、神経症状については、鉄分不足症状と比べると回復が遅く、また、完全に改善しない場合もあります。従って、初期の段階で処置を受けることが好ましいです。